21年度30句競詠(5位入賞)微妙な位置ですが、まぁ嬉しいことには違いありません。

選者総評より
ふらここの戻りは有無を言はさずに  ぶらんこの戻りを詠んで快作
独り身や夜更けに間引く貝割菜    何やら読む者の心を掻き立てる


                                        

                                 貝割菜

ふらここの戻りは有無を言はさずに

朧夜の出窓に猫の跳び乗りぬ

バロックの流るる講堂春隣 

春昼や亀の瞼の重くなる

長靴に貼りついてゐる桜かな

舞踏家の腰にスカーフ合歓の花

対岸に雨の名残りの濃紫陽花

袋から支払ふ幹事ビアガーデン

夏の月大観覧車に紛れけり

殊更に水を含ませ四葩描く


驟雨去るジャブジャブ池を躍らせて

底紅の紅鮮やかに濡れてをり

風入れてメロンの匂ふ仏間かな

半地下のカフェに涼しきカシニョール

カンナ燃ゆ第一釦まで留めて 

七月や石鹸の香の小犬抱く

待つてゐたやうに咲き出す烏瓜

小走りの抜け径昏し蝉時雨

夏蝶のよく飛んでくるポストかな

鉋屑散らかる鶏舎木槿咲く



店先は医学書ばかり夏の果て

遅く出る真白き月も晩夏かな

桃剥くや桃の機嫌を損なはず

夕風に乗るとんぼうの速さかな

独り身や夜更けに間引く貝割菜

外来種蔓延る土手や終戦日

茄子捥ぐエプロン丸く膨らませ

病棟のロビー鈴虫鳴き止まず

蜩に急かされてゐる締切日

弥生土器(うず)もれし地や小鳥来る



                                        

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