トップページ  掲示板  新俳句手帳  アルバム

                                         


    古い手帳 1                 向日葵(05.新人賞受賞作品)


花オクラ古拙な笑みの飛鳥仏

初雪やおおと言ふ声聞こえたる

碁敵を上座に据ゑて夏座敷

向日葵の空より他は何も見ず

とんぼうに逃げられし指風の中

エプロンを外し見に行く夕桜

エメラルドのやうな目をして恋の猫

台風とだけ書きしるし日記閉づ

落ち合ふは書店と決めて秋の昼

また一つしぐれて消える江戸噺


彩を一瞬奪ひ鳥渡る

半眼に冬を見届け九品仏

吹けば寄る七草粥の薄緑

銀盆に写りし顔や春深む

真顔なり光の中の入園児

老犬の頭に菖蒲巻いてやる

素麺をほぐして時の動き出す

片陰を譲り合ひして見舞い客

万緑の中で禁煙誓はせし

白萩の顔に触るるも子規の庭


九代目の御廟にかかる大椿

藁抜けば左右に遊ぶ目刺かな

寄りそうて目を合はさずに対の鴨

眉剃って夏めく顔となりにけり

犬小屋も日除けしてあり蕎麦処

コンパクト開けばそこに秋の天

風切羽一枚落とし鳥帰る

寒風に耳を削がれて泣きにけり

白鳥の首差し替へて眠りたる

冬迫る一歩も引かぬ仁王像

                                 

inserted by FC2 system