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         古い手帳 3(06・1〜12) 
                                       

採血の指を握れば雪予感

無口なる人の睫毛に春の雪

蝋梅や連綿体の相聞歌

対で下りそしらぬ顔の寒雀

備長炭弾けば更に余寒かな

春燈の影柔らかく明日館

羽織りても持ちても軽き春コート

渡されし双眼鏡に残り鴨

釣り人の挨拶けふは花のこと

ほろほろと句帳を濡らす花の雨


         夏

時折の風が支へし牡丹かな

夏めくや阿修羅の腕細きこと

走り梅雨寝癖の髪で会ひに行く

短日の明くるを待たず旅立てり    

暫くはニセアカシアの香のもとに


水輪より生まれしものに夏茜      

一切を見事に脱いで蝉生るる

水打つて水の匂ひに包まれし

レギュラーになると記して星祭る



         秋

白帝や牛跪く草千里

焚きつけの文を捻れば秋匂ふ

風の出て吾妻橋より秋気かな

閼伽桶の水そのままに柿落葉

引き売りの一休みして桃啜る


         冬

幾たびも肩幅合はせ毛糸編む

菊武者の袖より水の零れけり

鉈彫りの菩薩の眠り冬温し

しぐるるや誰も出て来ぬ骨董屋

石蹴れば何かが動く冬の川

                          

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