( 川底に落葉の影や円月橋 桜)
          

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俳句手帳 
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                                新 俳句手帳(08・1〜12)
12月

冬林檎
齧れば音の溢れけり

革ジャンに龍の刺繍や花やしき

冬桜散らずにをれば気づかれぬ

先頭をひょいひょい歩く冬帽子


小春日やバザーのクッキー売り切れる

11月

行商の零余子は枡で売られけり

散り残る桜紅葉や大師堂

息子来て刃にやはらかきラ・フランス

飛石の一つ離れて花八つ手

しぐるるや渡り廊下を小走りに



10月

雨粒を弾いて茄子の艶深む

濡縁に萩の
零れて子規の庭

逆さまに地図を見てをり穴まどひ

立待や擦り寄る猫を抱き上げる

花芒胸の辺りで揺れてをり



9月


赤のまま縛られ地蔵の足元に

どちらにも取れる返事や秋の風

手花火の渡さるる時落ちにけり

烏瓜引けば深入りするごとく

当直のナースの持てり蛍籠



8月

雲の峰部室の鍵を投げ渡す

花壇より外れてをりし立葵

帰省子のすぐに母校を訪ねけり

遠雷や河岸の名残の常夜灯

飼犬の好きだつた道木槿咲く


7月

戸定邸玻璃に波打つ薄暑かな

ペン胼胝(だこ)にインクの滲む半夏生

めまとひを払ひて釣のポイントへ

少年と肘が触れ合ふソーダー水

十薬の一瞥されて増えにけり


6月

盛り塩の崩れさうなる走り梅雨

百合の蘂わづかな風を見逃さず

てんと虫背中を割つて飛び立てり

万緑や試歩の一歩を躊躇はず

家系みな指先太く豆の花



5月

指先で遊んでゐたり春の水

山焼くやポケット多き作業服

釣人の木椅子の辺り蘖ゆる

柴又の蕎麦の喉越し夏兆す

黒揚羽もつれて消えり古戦場

4月


花影を崩して堰の水溢る

土筆摘む次の土筆を探しつつ

ユニセフへ水の募金や初燕

花ミモザペンフレンドと結婚す

のどけしや谷中銀座のメンチカツ

桜10句

初桜些細なことでまた笑ふ

ブーメラン桜に触れて戻りたる

湯の沸きてしだれ桜のひらきけり

病には触れずにゐたり朝桜

飛桜落花教授回診はじまりぬ

花の雲見知らぬ人に会釈さる

花疲れことに小さき貝釦

糸桜潜れば長し檻となる

往きに見てまた立ち止まる夕桜

花冷えや点字添へらる慰霊の碑


3月

マネキンの長き睫毛や黄砂降る

川底の砂舞ひ上がり二月尽

雛の間の奥に向田邦子の本

うどん屋の込み合ふてゐる納税期

傘などは要らぬと言ひて柳の芽

2月

寒明けの轍に光るに潦

待春や紙飛行機を追ふてをり

観覧車一気に降りる大嚔

鳩の目に光の戻る四温かな

昂るや踏まずにをれぬ霜柱

1月

いつまでも厨点して年惜しむ

着膨れて分身街をさ迷へり

一瞬のカーブミラーに聖夜の灯

まどろみて白鳥首を持て余す

七日粥啜れば眼潤みけり
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