トップページ  
俳句手帳 1
3
4 5
大会句 1 5
6  7 8
古い手帳1  2
 3
                                      平成24年俳句手帳 
  
12月

  寒菊  

鴛鴦の揺り戻されて一羽なる

花型に切りて障子を繕ひぬ

借り畑の冬菜の畝のふかふかと

マニキュアの指さき覗く手套かな

猛禽の見開く眼風花す

寒菊を起こさば胸に余りたる



11月

    棗の実

枕辺にアロマオイルを振る良夜

障子洗ふ紫尾連山に背を向けて

覚えある声に振り向く星月夜 

秋霖に幼ナのくせ毛丸くなる

留守がちの家に色づく棗の実

振り向けば羽音に揺るる女郎花 




10月

  予備校生

虫籠を洗つてをりぬ予備校生

兄の忌を訊ねられたる花野かな

蟷螂の腹のあたりを摘まみけり

十六夜の窓に置かるるテディベア

カップルに少し間延びの昼ちちろ

木の洞の一瞬光り小鳥来る


9月

  萩の叢

新涼や仔牛の耳に赤きタグ

鯉の背の盛り上がりたる秋出水

草の絮水面に溶ける日暮かな

眠剤のゆるりと効いて星の恋

秋灯下使はぬままに切手古る 

空耳のやうな風でて萩の叢 



8月


  会話

凌霄花の重さ見飽きて昼昏し

島歌に指笛ひびく帰省かな

吊る前に鳴らしてみたり貝風鈴

鳳仙花いつもと違ふ会話して

蝙蝠の耳きはやかに飛び交ひぬ

湧水の砂噴き上がる涼しさよ



7月

  おもちゃのレール

蜻蛉生るたちまち草に紛れけり

ライトバンのパン屋きてゐる夏木立

盛塩に指の跡つく半夏かな

夏座敷おもちゃのレールそのままに

絵馬堂に忘れてきたる白日傘

堂々と近づいて来る鴉の子

6月はお休み
<(_ _)>


5月

  蜷の道

尖ること忘れてしまひ蜷の道

独学は貝のごとしよ涅槃西風

初つばめ蔵の窓より折り返す

徳利を振つて寝かせる多佳子の忌

ぼうたんの絹の襞もて崩れけり

ぬひぐるみ洗ひ万緑のひと滴



4月

花辛夷  

おほまかな地図を渡され蛇出づる

花菜風声より先に影の来て

ふらここを置いてけぼりに春夕焼

甘噛みの子猫の口の不意に裂く

残り鴨丸く膨れて眠りたる

電動のベッド起こさば花辛夷



3月

春の雷

針金で繕ふ土器や春の雷

春光の中より鯉の浮き上がる

箱書に明治とありぬ立雛

春の宴卓布に光る銀食器

春めいて子安地蔵の肩に鳩

自転車を漕ぎ出してより梅匂ふ


2月

手毬寿司

水溜り迷はず飛んで冬の虹

花束に触るる横顔春近し

対岸のチェンソー響き冴え返る

青空を半分残し春の雪

水鳥の半音上げて飛び立ちぬ

春宵の紅透けてゐる手毬寿司


1月

アンモナイト

ジョーカーを引かせくくくと初笑ひ

無造作に活けて水仙向き合へり

去年今年アンモナイトの眠りかな

凍星や壜に集める千羽鶴

母植ゑし大根斜めにせり上がる

初春のエプロン緩く結びけり


inserted by FC2 system